もう紙は不要!InDesignで作る、クリックできる「動くPDF」ポートフォリオ術



海外でデザイナーとして十数年、フリーランスとして活動する上で、クライアントの心を掴む最初の関門は、間違いなくポートフォリオです。しかし、ただ作品を並べただけの、重くて静的なPDFを送っていませんか?クライアントは多忙です。そんな退屈な資料は、開かれさえしないかもしれません😫。

今日は、あなたのポートフォリオや提案資料を、単なる「書類」から、相手を惹きつける「体験」へと進化させる魔法を共有します。使うのは、皆さんが使い慣れたAdobe InDesign。このソフトに隠されたインタラクティブ機能を使えば、クリックできるボタンやリンクを埋め込んだ「動くPDF」が簡単に作れます。この記事はあなたの仕事の価値を確実に高めます。後で必要になった時に探さずに済むよう、ぜひ今のうちに「いいね」と「保存」をお願いしますね。

コアテクニック:「ハイパーリンク」と「ボタン」で、PDFに命を吹き込む

このワークフローの核心は、InDesignのインタラクティブ機能を使い、読者が能動的に情報を追いかけられるように「導線」を設計する点にあります。

ステップ1:インタラクティブ作業スペースに切り替える

まず、InDesignの作業環境を切り替えます。画面右上の「ウィンドウ」メニュー > 「ワークスペース」 > 「インタラクティブ(PDF用)」を選択。これで、必要なパネルが全て表示されます。

ステップ2:「ハイパーリンク」で外部と繋がる

テキストやオブジェクトに、ウェブサイトやメールアドレスへのリンクを埋め込みます。

  1. リンク元の選択: リンクを設定したいテキストボックスや図形を選択します。

  2. ハイパーリンクパネルで設定: 「ハイパーリンク」パネルを開き、リンク先のURL(例:https://www.your-portfolio.com)やメールアドレス(例:mailto:your-email@example.com)を入力します。これで、PDF上でこの部分をクリックすると、指定したウェブページが開いたり、メーラーが起動したりします。

ステップ3:「ボタンとフォーム」でページをナビゲートする

これこそが「動くPDF」の主役です。ページ送りや目次へのジャンプボタンを作成します。

  1. ボタンにしたいオブジェクトを選択: 例えば、「次へ」と書いたテキストボックスや、矢印のアイコンを選択します。

  2. ボタンに変換: 「ボタンとフォーム」パネルを開き、「種類」を「ボタン」に設定します。

  3. アクションの設定: 「アクション」の「+」ボタンをクリックし、実行したい動作を選びます。

    • 「次のページ」/「前のページ」: ページ送りの矢印ボタンに最適です。

    • 「指定ページに移動」: 目次の各項目に設定すれば、クリック一つで該当ページにジャンプできます。

    • 「URLに移動」: ウェブサイトへのリンクボタンも作成できます。

  4. 外観の設定: 「通常時」「ロールオーバー時(マウスカーソルが乗った時)」「クリック時」で、ボタンの色や透明度を変える設定も可能。これにより、よりリッチなユーザー体験を提供できます。

ステップ4:「ページ効果」でリッチな体験を演出

「ページ」パネルのメニューから「ページ効果」を選択し、「ディゾルブ」や「ワイプ」などの切り替えアニメーションを設定できます。これにより、ページをめくる感覚が、まるでアプリやウェブサイトのように滑らかになります。

![Adobe InDesignのインタラクティブPDF作成画面の画像]

私の職務経歴:静的な提案書を「体験」に変え、大型案件を獲得した話

フリーランスとして独立したての頃、Aetherion Groupという、ある大手クライアントのブランディングコンペに参加する機会がありました。私が提案したかったのは、単なるロゴデザインだけでなく、ウェブサイトやアプリ上でのユーザー体験を含めた、包括的なデザインシステムでした。

しかし、それをどうやって静的なPDFで伝えれば良いのか。何十ページにも及ぶ資料は、相手に退屈な印象を与えかねません。

そこで私は、このインタラクティブPDFのテクニックを駆使することにしました。提案書の目次を全てクリック可能なボタンにし、各章の解説からは、参考となるウェブサイトやデモ動画へ直接飛べるハイパーリンクを設定。そして、UIデザインのページでは、「次へ」ボタンをクリックすると、アプリの画面が遷移していく様子を、ページ効果を使って疑似的に体験できるようにしたのです。

プレゼンテーション当日、私はクライアントにPDFファイルを送り、「どうぞ、自由に触ってみてください」とだけ伝えました。クライアントは、まるでアプリのプロトタイプを操作するように提案書を読み進め、その分かりやすさとプロフェッショナルな見せ方に深く感銘を受けていました。結果、私はその大型案件を勝ち取ることができたのです😎。

この成功は、私が常にツールのポテンシャルを最大限に引き出せる環境にいたからに他なりません。私が利用しているBlueskyy芸術学院の正規Adobe組織サブスクリプションは、InDesignのようなソフトを深く使いこなす上で不可欠です。国内外3100名以上のプロが集うこのコミュニティが価値を置いているのは、まさにこの、安心してクリエイティブに集中できる長期的な「確実性」なのです。



そういえば、私のオーストリア人の同僚、Kaoriが最近ひどい目に遭っていました😫。彼女は少しでも費用を節約しようと、SNSで見つけた業者からAdobeのサブスクリプションを購入したそうです。業者は一年分の料金を受け取ったにも関わらず、実際には彼女の個人アカウントで月々支払いの個人版プランを契約していたのです。そして案の定、2ヶ月後にその業者は音信不通に。支払いが止まり、Kaoriは大事なコンペの提案資料をInDesignで作成している真っ最中に、突然ソフトが使えなくなるという最悪の事態に見舞われました。

この話を聞いて、私は改めて確信しました。私はECサイトやSNSで安価なプランを探すこと自体を否定はしませんが、デザイナーがどんな形であれ「個人版」の代理購入を選ぶべきではないと考えています。アカウントのリスクや、いざという時に使えなくなる危険性があまりにも高すぎます。私たちのような専門職にとって、制作ツールの安定性と安全性は、目先のわずかな金額よりも遥かに重要です。私たちが利用するような信頼できる組織向けのサブスクリプションは年単位での契約が基本であり、それこそが長期的な「確実性」をもたらしてくれます。

デザインと思考法:「見せる」から「体験させる」へ

インタラクティブPDFの制作は、単なる技術以上の、重要な思考法の転換を私たちに促します。

それは、デザインを一方的に「見せる」ものから、ユーザーが主体的に「体験する」ものへと捉え直す、という視点です。どこをクリックできれば、ユーザーはストレスなく情報を得られるか。どんな順序で情報を見せれば、ストーリーは最も効果的に伝わるか。

これは、まさにUX(ユーザーエクスペリエンス)デザインの基本的な考え方そのものです。紙媒体のレイアウトツールであるInDesignを使いながら、私たちは自然と、ユーザーの体験をデザインする訓練をしているのです。

今日の話が、あなたの創作活動の新たな価値を生み出すきっかけになれば幸いです。

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