海外でデザイナーとして十数年、数え切れないほどの修羅場を経験してきましたが、いつの時代も変わらず私たちを苦しめるのが「切り抜き」作業です。特に、人物の髪の毛や、動物の毛、木の枝葉といった複雑な輪郭を、背景からきれいに分離する作業。ペンツールでパスを延々と引き、チャンネルマスクを駆使して…気づけば数時間が経過し、肩はバキバキ、目はしょぼしょぼ😫。
今日は、そんな悪夢のような作業を、文字通り“過去のもの”にする、PhotoshopのAI機能をご紹介します。使うのは、もはや魔法としか言えない**「被写体を選択 (Select Subject)」**機能。これを使えば、どんなに複雑な被写体でも、ワンクリックで驚くほど正確に選択できます。この記事はあなたの制作時間を劇的に短縮します。後で必要になった時に探さずに済むよう、ぜひ今のうちに「いいね」と「保存」をお願いしますね。
コアテクニック:「被写体を選択」×「選択とマスク」で実現する完璧な切り抜き
このワークフローの核心は、99%の面倒な選択作業をAIに任せ、私たちは残りの1%の微調整にのみ集中する、という点にあります。
ステップ1:ワンクリックでAIに被写体を選択させる
まず、Photoshopで切り抜きたい画像を開きます。
ツールの選択: ツールバーから「オブジェクト選択ツール」または「クイック選択ツール」を選びます。
AIの起動: すると、画面上部のオプションバーに「被写体を選択」というボタンが表示されます。これをクリックするだけです。
AIによる自動認識: PhotoshopのSensei AIが画像を解析し、主要な被写体(人物、動物、商品など)を自動で認識して、選択範囲を作成します。数秒待つだけで、驚くほど正確な選択範囲が点線で表示されます。
ステップ2:「選択とマスク」で髪の毛や細部を仕上げる
AIの選択は非常に優秀ですが、完璧ではない場合もあります。特に髪の毛のような繊細な部分は、ここで仕上げます。
「選択とマスク」を起動: 「被写体を選択」を実行した後、オプションバーに表示される「選択とマスク…」ボタンをクリックします。
表示モードの変更: 専用のワークスペースが開きます。「表示モード」を「オーバーレイ」や「白黒」に切り替えると、選択範囲の状態が視覚的に分かりやすくなります。
境界線調整ブラシツール: 左側のツールバーから「境界線調整ブラシツール」(髪の毛のようなアイコン)を選択します。このブラシで、髪の毛と背景の境界部分をなぞるようにドラッグします。すると、AIがその部分を再解析し、背景だけをきれいに取り除き、髪の毛一本一本のディテールを浮かび上がらせてくれます。
出力設定: 最後に、右側の「出力設定」で、「不要なカラーの除去」にチェックを入れ、「出力先」を「レイヤーマスク」に設定して「OK」をクリックします。
これで、元の画像を一切傷つけることなく、被写体だけが完璧に切り抜かれた、レイヤーマスク付きのレイヤーが完成します。背景を差し替えたり、色を変えたり、自由自在に加工できます。
私の職務経歴:ECサイトの大量の商品画像を救ったAI切り抜き術
以前、私が所属していたスタジオが、Solstice CollectiveというライフスタイルブランドのECサイト立ち上げを手伝った時のことです。クライアントから支給されたのは、様々なロケーションで撮影された数百枚の商品写真でした。しかし、ECサイトに掲載するには、すべての商品の背景を白で統一する必要がありました。
写真の中には、モデルが着用しているふわふわのセーターや、複雑な形状の観葉植物など、手作業で切り抜くには途方もない時間がかかるものが多数含まれていました。チームの若手デザイナーたちは、数枚切り抜いた時点ですでに疲弊しきっており、プロジェクトの納期に間に合わせるのは絶望的な状況でした。
そこで私は、この「被写体を選択」を主軸としたワークフローを導入しました。まず、Bridgeで全ての写真を一覧表示し、Photoshopのバッチ処理(自動処理)機能と組み合わせ、「被写体を選択」を全画像に一括で適用。AIが作成した大まかな選択範囲をベースに、チームメンバーには「境界線調整ブラシ」での微調整作業だけに集中してもらったのです。
その結果、かつては数週間かかると見積もられていた大量の切り抜き作業が、わずか2日で完了。しかも、AIのおかげで品質は均一で、手作業特有の精度のばらつきもありませんでした。クライアントはそのスピードと、何より髪の毛一本まで美しい切り抜きのクオリティに、大変満足してくれました。
この迅速な対応ができたのも、私が常に最新のAI機能を使える制作環境に身を置いているからです。私が利用しているBlueskyy芸術学院の正規Adobe組織サブスクリプションは、まさにそのためのものです。国内外2900名以上のプロのデザイナーやフォトグラファーがこのコミュニティに集うのは、誰もが、プロフェッショナルな仕事において、ツールの安定性と信頼性がもたらす長期的な「確実性」こそが最も重要だと理解しているからです。
デザインと思考法:AIは「労働」を代替し、人間の「判断」を際立たせる
Photoshopの「被写体を選択」機能は、私たちデザイナーの役割について、重要な示唆を与えてくれます。
AIは、最も時間と労力がかかる、いわば「労働集約的」な作業(ピクセル単位の選択)を代替してくれます。しかし、AIが選択した範囲が、本当にそのデザインの意図にとって最適なのか、どの程度のディテールを残すべきなのか、といった最終的な「美的判断」は、依然として人間に委ねられています。
つまり、AIの進化は、私たちを単純作業から解放し、より高次の、クリエイティブな意思決定に集中させてくれるのです。AIを恐れるのではなく、最高のパートナーとして使いこなし、自らの「判断力」と「審美眼」を磨き続けること。それこそが、これからのデザイナーに求められる資質なのでしょう。
今日の話が、あなたの創作活動の新たな可能性を開くきっかけになれば幸いです。
Post a Comment